セブンイレブン研究~強さの秘密②他社によるセブンイレブン専用工場

雑記

セブンイレブンの強みにせまる2回目は、セブンイレブンの商品を作る工場について。

1回目→セブンイレブン研究~強さの秘密①NDFとチームマーチャンダイジング
3回目→セブンイレブン研究~強さの秘密③創業者

メーカー所有のセブンイレブン専用工場

セブンイレブンの商品を作る工場は、【メーカー所有の】【セブンイレブン専用工場】があることが強みという話。

第1回目で説明した、チームマーチャンダイジングで商品を開発したら、実際の製造はメーカーが行うことになります。
そのとき、メーカーは自社の工場をセブンイレブン専用工場にしています

もちろん、全てではありません。
でも、全国に170以上のセブンイレブン専用工場があり、これはセブンイレブン全体の90%以上にあたるとのことです。
この数字は他コンビニチェーンよりかなり多いらしい。

そして、専用工場にセブンイレブンの資本は入らない。メーカー独自の取り組みによって作られています。

なぜ専用工場が作れるのでしょうか?

メーカーにとっては、工場を作ったら目一杯稼働させることが必須なので、その分はセブンイレブンが責任をもって買い取る契約にはなっているのでしょう。

では、セブンイレブンとしてなぜそんなことができるのか?

セブンイレブンのドミナント戦略

答えはセブンイレブンの【ドミナント戦略】です。
正確には、ドミナント戦略の結果として、専用工場が可能になる、と言えます。

ドミナント戦略とは、
一定の地域内に集中的に出店し、認知度を高める手法です。

店舗同士で顧客を奪い合うこと(カニバリゼーションといいます)をいとわず、チェーン全体として売り上げを上げていくことを目指します。

セブンイレブンは1974年に東京都江東区で第一店目を出店以来、ドミナント戦略で出店を行なってきています。

心理学的側面での単純接触効果もありますが、コンビニの場合は、物流効率も高める効果が最も大きいのです。
なぜなら1台の配送車で近隣の店舗を短時間で回ることができるから。

で、ある地域に多くの店舗があって配送も集中する、となれば配送の出発点となる工場もその近くにあった方がよい、というわけです。

結果として、その工場からはほとんどセブンイレブン向けの商品になる。
ならば専用工場でいいよね、という話で専用工場が増えていきました。

専用工場であることのメリットの具体例

専用工場であることのメリットを具体的に2つ紹介します。

1つ目。
例えば、セブンイレブンが、商品に使うある原材料について、添加剤を含まないものにしたいとする。
今の健康や環境への関心の高まりでよくあるケースだと思います。

もし、その商品を作っているメーカーが、他社製品との共同工場の場合、これはすぐに切り替えは難しいです。
なぜなら、共同工場ということは、最終商品は別々でも原材料は同じものを使用しているため、セブンイレブン向けの商品だけ変えるわけにはいかないからです。

でも、その商品がセブンイレブンにしか提供していない専用工場ならそれは容易です。

2つ目は、東日本大震災のときに、セブンイレブンの現状復帰の速さが他社に比べ際立っていたという事例。

当時、以下のようなニュースがありました。

セブン-イレブン・ジャパン、震災後の物流対応を公表

工場ごとの製造状況や出荷状況を集めて、連携し、
・被災方面へはダメージが少なかった新潟・北陸地区から供給し、
・新潟・北陸地区の不足分は長野・山梨地区から供給する
といういわゆる”玉突き”配送を行うことができたということです。

これは専用工場だからこそ為せる技です。

セブンイレブンはマーケティングカンパニー

創業者の鈴木敏文氏はセブンイレブンのことをマーケティングカンパニーだと言っています。

自社で工場をもつより、その道のプロであるメーカーに持ってもらい運用する。
セブンイレブンはその力を借りる。
セブンイレブンはその代わり販売に力を注ぐ。
その方が理にかなっている、と。

全くの正論です。
AppleがiPhoneの製造工場は持たず、商品企画・設計に全力を注いでいる、というのと似ています。

でも、言うは易く行うは難し。
交渉力や実現力が簡単でないことは容易に想像ができます。

それを現実に運用している、【他社によるセブンイレブン専用工場】がセブンイレブンの強みの源泉なのです。


1回目→セブンイレブン研究~強さの秘密①NDFとチームマーチャンダイジング
3回目→セブンイレブン研究~強さの秘密③創業者

<参考文献>
– セブン-イレブンだけがなぜ勝ち続けるのか
– セブン-イレブン 終わりなき革新
– セブン-イレブン 金の法則 ヒット商品は「ど真ん中」をねらえ
– わがセブン秘録